ちょうど今日がISSCC締め切りでしたね、投稿した各位お疲れちゃんです・・Best of Luck!
韓国語や中国語ではISSCC投稿ノウハウブログがある中、日本語では少ないので記事を書いてみました。
なぜトップ学会に通すか?
なぜトップ学会に通すか?というのはよく議論されます。
- キャリアアップのため
ISSCC first author経験があるとキャリア的には"おっ"となるものです。
回路に限らずですが、トップ学会を通すには企画力、設計力、測定ノウハウ、論文を通したコミュニケーションと総合的な能力が要求され、ある程度その能力の証明になるからかと考えています。
博士号がプラス評価されるのと似た理由ですね。
海外の半導体企業に就職している方も、学生時代にトップ学会通している方が多いです。
そいえばワイ氏も学生時代に某SSCCとか某LSIで発表したからアメリカで就職できたような感じだったなあ。某SSCC通したら1億円くらいは生涯年収マシマシやで! https://t.co/aWvvjRzVZE
— うぱ (@upa_engineering) 2024年8月4日
- スキルアップのため
研究遂行の能力(上記の企画力、設計力、測定ノウハウ、論文を通したコミュニケーション力)を培うためには投稿チャレンジするのが最も効果的だと思います。
- そこにトップ学会があるから
こんな事書いておいてなんですが、意外とこういう人多くないですか?(僕もあまりなぜISSCCに通さないといけないかとか考えたことないです)
俺が世界一じゃー! というノリで研究するのが楽しかったり、 研究するからには世界一を目指して当たり前やろ という感じでしょうか。
others
ipceさんのブログとかも合わせてどうぞ。 note.com
他分野のトップ学会チャレンジ特集もとてもおもしろいので、見てモチベーションを上げましょう。 https://www.ieice.org/~cs-edit/magazine/ieice/spsec/Bplus40_sp.pdf
投稿までのスケジュール
慶應黒田研究室ISSCC論文ができるまで | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
この記事を必ず目を通しましょう。
研究の流れですが、
(締め切り一年前):研究の構想、回路構想を創案
(締め切り半年前):チップ設計~レイアウト設計
(締め切り三ヶ月前):論文執筆開始
(締め切り2ヶ月~):チップ測定
のようなものが代表的かと思います。こんな理想通り行くことはないのですが。
どのような研究をすればISSCCに通るか?
https://submissions.mirasmart.com/ISSCC2024/PDF/ISSCC_WritingGoodISSCCPaper.pdf
どのような論文・研究をすればISSCCに通るか、というのは非常に難しく研究経験が問われる所です。
上記のWriting Good ISSCC Paperは必ず目を通しましょう。
特に学生さんであれば、PI(教員)の経験値や目利きにこの辺りは左右される事になるかと思います。
共同研究など、または単なるアドバイスをもらう目的でもISSCC採択経験が豊富な人と早めにディスカッションして意見や査読者から見たときの気になる所などフィードバックしてもらうのが良いと思います。意外とメールで相談すれば研究者の方は喜んで相談に乗ってもらえるものかと思います。
例えばISSCCが明確に求めているのは: "Does it advance the state of the art?"です。性能でもなんでも、従来から何かを進める必要があります(解析などの論文はスコープ外となります)
また残念ながら理論もあまり求められていません。あくまで性能です。(良くも悪くも)
論文執筆
ISSCCの締め切りは9月上旬なので6月くらいから論文を書き始めると良いでしょう。
"ISSCCはProceedingsでは2Pなので一週間あれば書けるでしょw"と分野外の人によく言われますが、それで通れば苦労はしません^^
図や文章の第一版を6-7月頃に完成させ、そこからひたすらブラッシュアップしていきましょう。 慣れるまでは3ヶ月くらいwritingに掛けるのが一般的ではないでしょうか? 一度通すことができれば感触もわかってきて、より短時間で書けるようになる・・・🦆しれません。
図
7つの図(Figure)はISSCCや回路界隈特有のものがあると思います。みちっと回路ブロック図を詰め込む職人芸です。
この図のフィーリングを掴むためにもまずは10年分のISSCCプロシーディングスを読み漁ると良いと思います。
最初はその中から図の構図などをパクって作図しましょう。オリジナリティは回路で出せばOK。
サプリメント
ISSCCでは公開されない査読用の図を3つ付けることができます。こちらは必ず付けましょう。
何を付けるか?というと
- 提案技術の弱点(と思われそうな所)の反論を先回り
- 従来文献との詳細比較(で俺等の方がいいぜ!と言えるように)
- ちゃんと測定してるよ、というエビデンス
- 追加測定データ
などが定番でしょうか。
例えばISSCC'24ではこのような従来技術との比較図を載せていました。通る論文はサプリメントまでしっかり先回りして説得力のあるデータを提示していると思います(いきなりそこまで考えるのも大変ですが・・)
論文投稿!
渾身の論文を9月上旬に投稿しましょう。
Subcomitte(分野)によって投稿サイトで書かないといけない情報が違います。 また必ずこの結果は入れろ!というのも指示されているので、投稿サイトがオープンしたらすぐにID作って必要項目について確認しておきましょう。
コメント
回路分野は他分野よりも研究スパンが長く、結果が出るまで時間がかかりとてもPainfulです。 またチップが上手く動かなかったら投稿自体もできません。 体感3-5割くらいは投稿断念に追い込まれる感触です。 そのためISSCCの採択率は26%ですが、実際の採択率は10%台の難易度だと捉えておいた方が良いかと思います。
Rejectされたら
10月中旬、採択通知です。Acceptされた君、おめでとう! 頑張って執筆したけど残念ながらRejectされてしまった君、どんまいです。
ISSCC(回路系全般?)はReject通知だけ来て査読結果が来ません。 まずはSubcomitte ChairにFeedbackを求めるメールを書きましょう。
ISSCC Technical Committees — ISSCC - International Solid-State Circuits Conference
査読結果やTPC meetingでの議論を教えてくれるはずです。 (Chairはこのフォローまで仕事のうちなので、何度かリマインダ出しながら送りましょう。) 腑に落ちないコメントが多いですが、非があるものや誤解されてしまったポイントは必ず反省しましょう。
Rejectはつらいよ
僕の過去の投稿歴ですが、こんな感じです。
ISSCCはReject: 6 Accept: 5で大体はRejectされてます。(一発Acceptされたチップは全て大人数でやった大掛かりな製品で、採択されて当たり前なチップでした。ISSCCの上位20-30%?くらいはこのような金でぶん殴る論文が占めています)
- Subrange ADC: ISSCC'14(Reject) --> VLSI'14(Accept)
- Pipeline SAR ADC: ISSCC'16(Reject) --> VLSI'16(Reject) --> (大幅改定) --> ISSCC'17 (Accept)
- LiDARr1: ISSCC'18(Accept)
- WiFi: ISSCC'18(Accept)
- AIHW: ISSCC'18(Reject) --> VLSI'18(Accept)
- LiDARr2: ISSCC'20(Accept)
- LiDARr3: ISSCC'20(Reject) --> VLSI'20(Accept)
- Pipeline ADC: ISSCC'23(SRP Reject) --> CICC'23(Accept)
- Analog CiM: ISSCC'23(Reject) --> VLSI'23(Reject) --> ASSCC'23(Reject) --> (大幅改定) --> ISSCC'24(Accept)
時間は掛かりますが、一度RejectされたものをブラッシュアップしてISSCC再チャレンジして採択された例も二回ほどあります。 査読者も毎年変わるので、去年Rejectされたからと言って同じスコアが付くわけではなく、ちゃんと評価してくれる印象です。
自分との相談ですが、来年のISSCCに再チャレンジするというのもアリだと思います。
昔はISSCCレベルのものを準備しておけばVLSIで拾ってもらえましたが、今はレベルが大幅に上がりISSCCボーダーラインでもVLSIで落とされてしまう事も多いです。 どうしても査読は"運"が絡む"宝くじ"と割り切って、自分の研究を信じるのが大事かと思います。
Good Luck!!